イリノテカン:UGT1A1*6/*28を『検査済み』で終わらせない

使う場面抗がん剤監査レジメン確認初回投与前有害事象評価
30秒で要点
UGT1A1結果は『変異あり/なし』ではなく、どの組み合わせかまで確認します。 *6/*6、*28/*28、*6/*28ではSN-38の代謝低下により重篤な副作用、特に好中球減少のリスクが高まることが日本の電子添文でも注意喚起されています。
まずやること
イリノテカン開始前に、UGT1A1遺伝子型、予定用量、併用レジメン、総ビリルビン・肝機能、既往の骨髄抑制をセットで確認します。『検査が済んでいる』だけで監査を終えないことが最優先です。
避けたい判断『UGT1A1陽性』を一括りにする

なぜ重要?

PMDAの電子添文では、UGT1A1*6/*6、*28/*28、または*6/*28を有する患者では、活性代謝物SN-38の代謝低下により重篤な副作用、特に好中球減少が発現する可能性が高いとして十分な注意を求めています。[1][3]

2024年の大腸癌患者を対象としたメタ解析では30研究、4471例が含まれ、UGT1A1*28は好中球減少リスク上昇と関連しました。劣性モデルではOR 4.10(95%CI 2.69–6.23)で、*6も複数の遺伝モデルで好中球減少リスク上昇と関連しました。[2]

一方、遺伝子型だけで固定の減量率を機械的に決めることはできません。癌種、イリノテカン用量、併用薬、肝機能、前治療歴で毒性リスクは変わるため、遺伝子型は『リスクを上げる情報』として処方設計に統合する必要があります。[1][2]

UGT1A1*28劣性モデルで好中球減少リスクが上昇
*28劣性モデル OR4.1
基準1
2024年メタ解析(30研究、4471例)の統合結果。ORは相対指標であり、個々の患者の発症率そのものではありません。 [2]
見落とし1『UGT1A1陽性』を一括りにする
ヘテロ接合1つと、*6/*6・*28/*28・*6/*28ではリスクの重みが同じではありません。結果票の具体的な遺伝子型まで確認します。
見落とし2遺伝子型だけで一律に減量率を決める
毒性リスクは用量、癌種、併用療法、肝機能でも変わります。遺伝子型は重要ですが、単独で処方を決めるルールではありません。
見落とし3初回を無事に終えたらリスクが消えたと考える
累積する骨髄抑制、肝機能変化、下痢による脱水などで次コースの耐容性は変わります。遺伝子型は固定でも臨床リスクは動きます。

判断フロー

1
UGT1A1*6と*28の具体的な組み合わせを確認する。
2
予定イリノテカン用量、投与間隔、併用薬を確認する。
3
総ビリルビン、AST/ALT、骨髄予備能、既往毒性を重ねてリスクを評価する。
4
必要に応じて初回用量、支持療法、CBC・下痢モニタリング計画を処方医と再確認する。

処方監査・病棟で見るポイント

  • UGT1A1*6/*28の具体的遺伝子型
  • イリノテカンの1回量と投与スケジュール
  • 併用抗がん剤と骨髄抑制リスク
  • 総ビリルビン・AST・ALT
  • 前治療の好中球減少・下痢歴
  • 感染症リスクとG-CSF使用計画
  • 下痢時の止瀉薬・受診指示
  • 次コース前のCBC・肝機能回復状況
この患者ならどう動く?

ケース:FOLFIRI開始予定。UGT1A1検査は『変異あり』とだけカルテ要約に記載され、処方は標準量で入力されている。総ビリルビンは基準上限付近で、前治療でGrade 3好中球減少歴がある。

薬剤師の次の一手:遺伝子検査結果票を確認し、*6/*6・*28/*28・*6/*28に該当するかを特定します。肝機能と既往毒性も重ね、標準量のままでよいか、初回からの用量調整や支持療法強化が必要かを再評価します。
日本で使うとき
日本の電子添文では、UGT1A1*6/*6、*28/*28、*6/*28で重篤な副作用、とくに好中球減少の発現可能性が高いと注意喚起されています。具体的な初回用量調整は癌種・レジメン・患者背景を含めて判断し、施設プロトコルも確認します。
エビデンスの強さ

中等度~強い:国内電子添文+複数研究を統合したメタ解析

国内電子添文で高リスク遺伝子型への注意喚起が明記され、2024年メタ解析でも*28および*6と好中球減少・下痢リスク上昇との関連が確認されています。[1][2][3]

限界:遺伝子型別の最適初回用量を癌種・レジメン横断的に一律規定できるだけのエビデンスはありません。毒性発現率は用量、併用療法、人種、肝機能などで変動します。
ヤクレンズまとめ

UGT1A1は『検査済み』ではなく『どの型か』まで見る。

*6/*6・*28/*28・*6/*28は、好中球減少を中心とした重篤毒性の重要な警告サイン。

遺伝子型を用量・肝機能・併用療法・既往毒性と統合して監査する。


参考文献

  1. PMDA. イリノテカン塩酸塩点滴静注液 医療用医薬品情報・電子添文等. PMDA
  2. Nguyen TT, et al. Meta-analysis revisiting the influence of UGT1A1*28 and UGT1A1*6 on irinotecan safety in colorectal cancer patients. 2024. PMID: 39171626. PubMed
  3. PMDA. 塩酸イリノテカン 使用上の注意改訂情報(2008年6月16日指示分). PMDA Safety

本記事は医療従事者向けの情報整理を目的としています。個別患者への適用は、最新の電子添文・ガイドライン・患者背景・施設ルールを確認して判断してください。